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東京都新宿区 産科事故を扱う谷直樹法律事務所

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早期母子接触

早期母子接触

弁護士谷直樹は、「早期母子接触」の事案を2件担当し、うち1件は2012 年 8 月 24 日の「『早期母子接触』実施の留意点」後の事案で、訴訟上の和解で解決しました。
「早期母子接触」とは、正期産新生児の出生直後に実施する母子の皮膚接触をいいます。
本来、カンガルーケアは、全身状態が安定した早産児に新生児集中治療室内で実施するものですが、以前は、漠然と母子の皮膚接をすべてカンガルー・ケアと呼ぶこともありました。




日本小児科学会新生児委員会「新生児のプライマリ・ケア」より

「『早期母子接触』実施の留意点」(2012 年 8 月 24 日)
1. 「カンガルーケア」とは、全身状態が安定した早産児に NICU(新生児集中治療室)内で従来から実施されてきた母子の皮膚接触を通常指す。一方で、正期産新生児の出生直後に分娩室で実施される母子の皮膚接触は、異なるケアが求められるにも関わらず、この「カンガルーケア」という言葉が国内外を問わず用いられ、用語の使用が混乱している。そこで、正期産新生児の出生直後に実施する母子の皮膚接触については、ここでは「早期母子接触」と呼ぶ。
2. 出生直後の新生児は、胎内生活から胎外生活への急激な変化に適応する時期であり、呼吸・循環機能は容易に破綻し、呼吸循環不全を起こし得る。したがって、「早期母子接触」の実施に関わらず、この時期は新生児の全身状態が急変する可能性があるため、注意深い観察と充分な管理が必要である(この時期には早期母子接触の実施に関わらず、呼吸停止などの重篤な事象は約 5 万出生に 1 回、何らかの状態の変化は約 1 万出生に 1.5 回と報告されている)。
3. 分娩施設は、「早期母子接触」実施の有無にかかわらず、新生児蘇生法(NCPR)の研修を受けたスタッフを常時配置し、突然の児の急変に備える。また、「新生児の蘇生法アルゴリズム」を分娩室に掲示してその啓発に努める。
4.「早期母子接触」を実施する施設では、各施設の実情に応じた「適応基準」「中止基準」「実施方法」を作成する。
5. 妊娠中(たとえばバースプラン作成時)に、新生児期に起き得る危険状態が理解できるように努め、「早期母子接触」の十分な説明を妊婦へ行い、夫や家族にも理解を促す。その際に、有益性や効果だけではなく児の危険性についても十分に説明する。
6. 分娩後に「早期母子接触」希望の有無を再度確認した上で、希望者にのみ実施し、そのことをカルテに記載する。

○ 「『母子同室』実施の留意点」(2019 年 9 月 5 日)
1. 出生後早期から母子が同じ部屋で過ごす医療施設内で実践するケアを母子同室と言う。
2.母子同室が行われる出生後早期は、胎児から新生児へと呼吸・循環の適応がなされる不安定な時期でもあるが、母子同室の実施の有無と急変(sudden infant death syndrome :SIDS もしくは apparent life-threatening event :ALTE)には関連がなかった。
3.母子同室中の急変は、母と添い寝中の急変が最も多く、母子はベッドを共有せず、児は仰臥位とする。
4.母子同室を実施するにあたっては、新生児蘇生法プログラム(NCPR)を修得したスタッフを配置する、急変時に蘇生をする場所をあらかじめ定めておき、蘇生に必要な物品を準備する、急変時の緊急コール体制を決める。
5. 母子同室を実施する施設では、各施設の実情に応じた「適応基準」「中止基準」「実施方法」を作成する。
6. 妊娠中(たとえばバースプラン作成時)に、母子同室の十分な説明を妊婦へ行い、夫や家族にも理解を促す。
7. 分娩後に母子同室希望の有無を再度確認したうえで実施し、そのことを記録する。

○ 産科医療補償
再発防止委員会からの提言 
早期母子接触実施時の管理
実施前に
◆妊娠中に妊産婦・家族へ十分説明を行った上で、妊産婦・家族の早期母子接触実施の希望の有無を確認する。
◆早期母子接触の適応基準・中止基準に照らし、母子の状態が早期母子接触実施可能な状態であるか評価する。

実施にあたって
医療関係者による母子の継続的な観察を行う。
新生児への SpO2 モニタ、心電図モニタ装置等の機器による観察と医療関係者による頻回な観察を行う。
上体挙上する(30 度前後が望ましい)。
児の顔色が悪い、呼吸がとまる、うなり声が出るなど、児の異変に気づいたら、すぐに報告するよう伝える。
温めたバスタオル等で児を覆う。
児の顔が母親からよく見える位置で行う。
児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする。

○ 産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2023
CQ801(360頁) 出生直後の新生児呼吸循環管理・蘇生については?
7.早期母子接触は,「早期母子接触実施の留意点」を遵守し,十分な説明のうえで同意を得て実施する.(B)」

CQ802(366頁) 生後早期から退院までにおける正期産新生児に対する管理の注意点は?
15.母子の状態に問題がないことを確認できれば,安全に留意しながら生後早期からの母子同室を支援する.(B)

解説
生後早期からの母児同室について
「15.生後早期からの母児同室と母乳育児支援:生後早期からの母子同室と母乳育児支援は母子ケアの基本である.AAP/ACOGのガイドラインでは「出生直後から新生児の全身状態が落ち着く生後2時間までは児の状態をよく観察し,その後は母子同室が至適なケア」としている.わが国の脳性麻痺症例分析においても,生後3時間頃までは新生児蘇生処置および小児科入院を要する事象が出現した事例が特に多く,加えて生後2日までにおいても新生児蘇生処置および小児科入院を要する事象が出現した事例が多かったとされている.このことから,母子の状態に問題がないことを確認したうえで,児は母親とは別のベッドで仰臥位のもと,体温保持とともに,パルスオキシメーター等による監視のもとで安全に留意して行う.母体の健康状態(帝王切開後や大量出血後など)や分娩施設の事情によっては,必ずしも早期の母児同室にこだわる必要はない.なお,母児同室のあたっては妊娠中に十分な説明や異常徴候の発見についての指導を行い,分娩後に希望の有無を確認したうえで実施する」(370頁)

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