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東京都新宿区 産科事故を扱う谷直樹法律事務所

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HELLP症候群

HELLP症候群

HELLP 症候群は、Hemolysis(溶血)、Elevated Liver enzymes(肝酵素上昇)、Low Platelets(血小板減少)を3主徴とする症候群です。
HELLP 症候群と臨床的急性妊娠脂肪肝(acute fatty liver of preg-nancy:AFLP)は臨床症状と血液検査所見から鑑別することになりますが、コンセンサスが得られた診断基準は未だありません。ただ、両者ともに有効な治療法はなく、原則的には早急に妊娠終結させるという管理方針で一致していますので、最初の段階では鑑別診断より両者の可能性を想定した診療が求められます。

◆ 「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2023」

CQ312(196頁)  妊産褥婦に HELLP 症候群・急性妊娠脂肪肝を疑ったら?
「1.血算,血液凝固検査(PT,フィブリノゲン),肝機能(AST,ALT,総ビリルビン,LDH),アンチトロンビン(AT)活性,腎機能(クレアチニン,尿酸),血糖値を測定する.(B)」
「2.HELLP 症候群・臨床的急性妊娠脂肪肝への進展が否定できなければ,鑑別のための検査を反復する.(B)」
「3.診断された,もしくは,強く疑った場合には,母体および新生児に対する適切な管理が可能な施設で管理する.(B)」
「4.HELLP 症候群と診断されたら,妊娠週数および病態の重症度を考慮し,娩出時期を決める.(B)」
「5.臨床的急性妊娠脂肪肝と診断されたら,産科 DIC の発症に注意しながら早急な娩出を行う.(B)」

◆ 「産科婦人科疾患最新の治療2022-2024」



「『突然』の上腹部痛・心窩部痛,悪心・嘔吐,倦怠感,食欲不振などの症状を訴えたときに疑う.妊娠末期(妊娠28週0日以降)から産褥期に発症することが多い.」(50頁)
「HELLP症候群関連の妊産婦死亡の減少のためには,妊娠高血圧腎症の合併症としての子癇・頭蓋内出血の続発を防止することが重要と考えられている.具体的には,①適正な降圧,②硫酸マグネシウムによる子癇予防,③血小板減少, DIGなどの出血傾向に対する対策(輸血療法)となる.①②は,血圧上昇を認めた場合に実施する.③は,帝王切開など手術操作の侵襲による止血困難予防としても重要である.」(51頁)

◆ 名古屋地裁平成21年12月16日判決

遅くとも1月14日の時点でpartial HELLP症候群を発症し,帝王切開による一定の小康状態を経た後,1月16日中にHELLP症候群へ移行するとともに,子癇,DICを併発して,死に至った事案で、
「被告病院における帝王切開後の管理は,血液検査及び降圧剤投与の点について,重症の早発型PIHが10日程度続いた後に帝王切開を実施したAに対する管理として不十分というべきであり,過失を認めるのが相当である。」
「帝王切開後の管理に過失がなければ,Aが現実に死亡した時点においてなお生存していた高度の蓋然性を認めるのが相当である。」
と判示し約8500万円の賠償を命じました。

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